なぜ社長が一番売れる会社は危険なのか?営業力を会社の資産に変える方法

中小企業では、社長が一番売れることは珍しくありません。

社長が商談に出ると話が早い。
顧客の課題をその場で整理できる。
相手の経営者とも目線が合う。
価格や条件の判断も早い。
会社の考え方や支援の背景まで、自分の言葉で伝えられる。
だから、社長が出ると受注しやすい。

これは、多くの中小企業で起こっている自然な状態です。

そして、社長に営業力があること自体は、会社にとって大きな強みです。創業期や成長初期においては、社長の営業力が会社を伸ばしてきたはずです。

社長の人脈、信用、提案力、判断力があったからこそ、最初の顧客が生まれ、売上が積み上がってきた。それ自体は、否定する必要がありません。

ただし、会社が次の成長段階に進むときには、社長が一番売れる状態がリスクにもなります。

問題は、社長が売れることではありません。社長がなぜ売れるのかが、会社の中で分解・言語化されていないことです。

社長が商談で何を聞いているのか。
顧客の課題をどう整理しているのか。
どのタイミングで提案しているのか。
なぜその価格や条件を提示しているのか。
どの顧客は追い、どの顧客は追わないと判断しているのか。

これらが社長の頭の中に閉じたままだと、営業担当者は再現できません。ホームページや営業資料にも反映されません。

社長が商談に出なければ、顧客に価値が伝わらない状態が続きます。

この記事では、社長の営業力とは何か、なぜ社長が一番売れる会社が危険になりうるのか、そして社長の営業力を会社の営業資産に変える方法を解説します。

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INDEX −目次−

社長の営業力とは何か?

社長の営業力というと、話がうまい、押しが強い、人脈が広い、クロージングが得意といったイメージを持つかもしれません。もちろん、それらも営業力の一部です。

しかし、社長が売れる理由は、単なる話術や勢いだけではありません。むしろ多くの場合、社長の営業力は複数の力が組み合わさってできています。

話術や押しの強さだけではない

社長の営業力は、単なる営業トークではありません。

顧客の事業を理解する力。
相手の本当の課題を見抜く力。
自社がどこまでできるかを判断する力。
顧客にとって必要な提案を組み立てる力。
その場で意思決定する力。
会社の信用を背負って約束する力。

これらが重なって、社長の営業力になっています。

営業担当者が同じ資料を使っても、社長ほど響かない。
同じサービスを説明しても、社長が話すと受注に近づく。

その背景には、社長が持っている事業理解や判断力があります。だからこそ、社長の営業力は個人のセンスとして片づけず、分解していく必要があります。

社長が売れる理由は、一つではありません。たとえば、次のような力が組み合わさっています。

まず、顧客理解力です。社長は、顧客の発言の裏側にある経営課題を読み取ります。表面的には「ホームページを直したい」「集客したい」「営業を強化したい」という相談でも、その奥にある売上構造、社内体制、意思決定の遅れ、顧客理解の不足まで見ています。

次に、事業理解力です。自社の商品やサービスが、顧客のどの課題に効くのかを把握しています。単なる機能説明ではなく、顧客の事業にどう役立つかを語れるため、提案に説得力が出ます。

さらに、意思決定力があります。社長は、その場で判断できます。

どこまで対応できるか。
どの条件なら受けられるか。
この案件は追うべきか、追わないべきか。

営業担当者が持ち帰るような判断を、社長は商談中に行っています。

そして、信用力があります。社長が出ることで、顧客には「この会社は本気で向き合ってくれている」という印象が生まれます。会社の代表として責任を持って話しているため、顧客も安心しやすくなります。

このように、社長の営業力は、顧客理解、事業理解、意思決定、信用、提案力、リスク判断、クロージングが重なったものです。

だからこそ、社長の営業力を会社に移すには、単に営業トークを真似するだけでは足りません。

社長の営業力は、中小企業にとって大きな成長エンジンです。

特に、まだ営業体制やマーケティング体制が整っていない段階では、社長の営業力が会社の売上を支えます。

ここでは、社長の営業力がなぜ強いのかを整理します。

社長が商談に出ると、顧客の本音を聞きやすくなります。相手が経営者や役員の場合、担当者同士では話しにくいことも、経営者同士なら話せることがあります。

「実は社内の意思決定が進まない」
「営業部門とマーケティング部門がつながっていない」
「今の外注先に不満があるが、どこを見直せばいいかわからない」
「本当は新規開拓を強化したいが、社内に任せられる人がいない」

こうした本音は、単なるヒアリング項目だけでは引き出せません。社長が相手の経営課題に踏み込めるからこそ、深い相談が生まれます。この顧客の本音は、営業だけでなく、商品設計やサービス改善にも活かせる重要な情報です。

社長が営業に出ると、意思決定が早くなります。

顧客から質問が出たときに、その場で回答できる。
条件調整が必要なときに、その場で判断できる。
提案内容を変えた方がよいと感じたら、すぐに方向転換できる。

これは、営業担当者には難しい場合があります。営業担当者は、上長確認や社内調整が必要になることがあります。

一方、社長は会社の方針や収益構造を理解しているため、判断が早い。

その早さが、商談を前に進める力になります。

社長は、自社のサービスだけでなく、会社の方向性や考え方まで含めて提案できます。

単に「この商品を導入してください」と話すのではなく、

「この課題なら、まずここを整理した方がよい」
「今はこの施策よりも、営業プロセスの見直しが先です」
「短期的にはこの提案、半年後にはこの体制づくりが必要です」

というように、顧客の未来を見据えて話すことができます。

顧客から見ると、これは単なる営業ではなく相談相手です。だから、社長の提案は信頼されやすくなります。

社長が商談に出ることで、顧客に本気度が伝わります。特にBtoBの商談では、「誰が責任を持ってくれるのか」が重要です。代表が直接話すことで、顧客は安心します。

また、社長の人脈や過去の実績が信用につながることもあります。紹介営業や人脈営業では、社長の信用が商談を前に進める後押しになります。

このように、社長の営業力は会社にとって重要な資産です。

ただし、その力が社長個人に閉じていると、次の成長段階で課題が出てきます。

社長の営業力は強みです。しかし、社長の営業力だけに頼り続けると、会社の成長を止める原因にもなります。

ここでは、社長の営業力に頼りすぎる会社で起こりやすい問題を整理します。

社長が一番売れる会社では、重要商談が社長待ちになりやすくなります。

営業担当者が初回商談をしても、最後は社長が出ないと進まない。
顧客が社長との面談を求める。
社長が忙しくて、商談の次回日程が先延ばしになる。

この状態では、社長の時間が売上の上限になります。どれだけ営業担当者を増やしても、最終的に社長が出ないと決まらないなら、商談数にも限界が出ます。

社長が営業現場に出ること自体は悪くありません。ただし、すべての商談が社長に依存しているなら、会社としての営業力は育っていない状態です。

社長が一番売れる会社では、営業担当者が育ちにくくなることがあります。なぜなら、重要な場面を社長が担ってしまうからです。

顧客の課題整理は社長が行う。
提案の方向性は社長が決める。
価格や条件の判断も社長が行う。
クロージングも社長が対応する。

この状態が続くと、営業担当者は商談を前に進める経験を積みにくくなります。

「最後は社長が決めてくれる」
「難しい話は社長に任せればいい」
「自分では判断できない」

このような状態になると、営業担当者の成長は止まります。営業担当者を育てるには、社長の商談に同席させるだけでは足りません。

社長が何を見て、どう判断して、なぜその提案をしているのかを言語化する必要があります。

社長は商談の中で、さまざまな判断をしています。

この顧客は本当に支援すべきか。
どこまで提案するべきか。
今すぐ受注を狙うべきか、関係性を育てるべきか。
価格はどの水準が妥当か。
この条件は受けてもよいか。
この案件は追わない方がよいか。

こうした判断は、営業担当者にとって非常に重要です。

しかし、社長の中では当たり前になっているため、言葉にされないことが多い。

「なんとなく違う」
「この案件は良さそう」
「この顧客は今は追わなくていい」

社長の中では理由があっても、言語化されていなければ社員には伝わりません。判断基準が共有されないままでは、営業担当者は自分で意思決定できるようになりません。

社長が営業の中心になっている会社では、顧客が会社ではなく社長についている状態になりやすくなります。

顧客が社長へ直接連絡する。
担当者よりも社長に相談したがる。
社長が出ないと安心しない。

これは、短期的には良いことのように見えます。しかし、長期的にはリスクです。

社長が忙しくなったとき、対応が遅れます。
担当者へ引き継ぎたいとき、顧客が不安を感じます。
事業承継のタイミングで、関係性を次世代に移しにくくなります。

会社として顧客との関係を育てるには、社長の信用を会社の信用へ変えていく必要があります。

社長が商談で語っている内容は、本来ならマーケティングにも活かせる情報です。

顧客がよく悩んでいること。
顧客が反応する言葉。
依頼前に不安に感じていること。
他社と比較されたときに決め手になること。
受注につながる事例。

これらは、ホームページ、サービス資料、SEO記事、事例ページ、セミナー、メルマガに展開できます。しかし、社長の商談内容が言語化されていないと、マーケティング施策に反映されません。

ホームページには一般的な説明しか載っていない。
営業資料はサービス概要だけで、顧客の悩みに刺さらない。
事例ページに、依頼後の変化が書かれていない。
SEO記事が顧客の検索意図とずれている。

このような状態になります。

社長が商談で自然に話している「選ばれる理由」を、Webや資料に反映できれば、社長が出る前から顧客理解が進みます。

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社長の営業力を分解するチェックリスト

社長の営業力を会社の資産に変えるには、まず何が社長の営業力を支えているのかを分解する必要があります。次の項目に、いくつ当てはまるでしょうか。

□ 社長が商談で最初に確認している質問を説明できる
□ 社長が顧客の課題をどう整理しているか共有されている
□ 社長がよく使う事例や説明が営業資料に反映されている
□ 社長が価格や条件を判断する基準が言語化されている
□ 社長が「追わない顧客」をどう判断しているか共有されている
□ 社長が商談で伝えている会社の強みがホームページに載っている
□ 社長が受注した案件の受注理由を営業チームで確認している
□ 社長が失注した案件の理由を振り返っている
□ 社長が使う営業トークや説明を録音・文字起こししたことがある
□ 営業担当者が社長の商談を見た後、振り返りの場がある
□ 社長が出ない商談でも、同じ資料・流れで提案できる
□ 社長の営業力を、採用・育成・マーケティングに活かせている

0〜3個の場合、社長の営業力が個人の中に閉じている可能性があります。まずは商談の録音や振り返りから始めるとよいでしょう。

4〜7個の場合、一部は共有できています。ただし、営業資料、提案プロセス、事例への展開はまだ改善余地があります。

8個以上の場合、社長の営業力を会社の資産に変える土台があります。組織営業とマーケティング施策へ展開していきましょう。

社長の営業力を会社の営業資産に変える5ステップ

社長の営業力を会社の資産に変えるには、精神論ではなく、具体的な手順が必要です。

ここでは、最初に取り組みたい5つのステップを紹介します。

1. 社長の商談を記録する

まずは、社長の商談を記録します。

録音する。
文字起こしする。
同席した営業担当者がメモを取る。
商談後に振り返りを行う。

目的は、社長の発言をそのまま真似することではありません。社長が何を見ているのかを把握することです。

どの順番で質問しているのか。
顧客のどの発言に反応しているのか。
どのタイミングで事例を出しているのか。
どこで提案の方向性を変えているのか。
顧客の反応が変わる言葉は何か。

これらを見ていくと、社長の営業力が少しずつ分解できます。

2. 受注・失注の理由を振り返る

次に、社長が受注した案件と失注した案件を振り返ります。受注した案件には、必ず理由があります。

顧客は何に価値を感じたのか。
どの説明が安心につながったのか。
どの事例が決め手になったのか。
競合と比較されたとき、何が違いになったのか。

一方で、失注した案件にも理由があります。

顧客の課題と提案がずれていたのか。
価格の見せ方に問題があったのか。
意思決定者に届いていなかったのか。
そもそも追うべき顧客ではなかったのか。

受注・失注の理由を振り返ることで、社長の判断基準が見えてきます。

この情報は、営業担当者の育成だけでなく、マーケティングにも活かせます。

3. 営業資料・提案書に落とし込む

社長が商談で毎回話していることは、営業資料や提案書に落とし込みましょう。

よくある顧客の悩み。
支援の考え方。
選ばれる理由。
導入事例。
料金の考え方。
支援の流れ。
よくある質問への回答。

これらを資料に入れることで、営業担当者は社長の説明を再現しやすくなります。また、顧客にとっても理解しやすくなります。

社長が毎回口頭で説明していることは、会社にとって重要な営業資産です。資料化することで、社長が出なくても伝わる状態に近づきます。

4. ホームページ・事例・SEO記事に展開する

社長の営業力は、営業資料だけでなく、ホームページやコンテンツにも展開できます。

社長が商談でよく聞く顧客の悩みは、SEO記事のテーマになります。
社長が商談で伝えている選ばれる理由は、サービスページの訴求になります。
社長が受注時に話している事例は、事例ページにできます。
顧客がよく不安に思うことは、FAQや資料に反映できます。

こうして、社長の商談で得た情報をWebに反映すると、問い合わせ前の顧客理解が進みます。

顧客は商談前に、自社の課題を整理できます。営業担当者は、商談で一から説明する負担が減ります。社長が出る前に、顧客が会社の強みを理解できる状態を作れます。

5. 営業会議と育成に組み込む

最後に、社長の営業力を営業会議と育成に組み込みます。

受注した案件を振り返る。
失注した案件を分析する。
社長が商談で使った質問や説明を共有する。
営業担当者が実際に使ってみた結果を確認する。
提案書や資料を改善する。

この流れを営業会議に組み込むことで、社長の営業力は個人の中だけに閉じなくなります。

営業担当者が社長の商談を見て終わりではなく、なぜその商談が進んだのかを振り返る。
その要素を次の商談に使う。
資料やWebにも反映する。

この繰り返しが、個人の営業力をチームの営業力へ変えていきます。

社長の営業力を組織に移すには、営業とマーケティングを分けない

社長の営業力を会社の資産に変えるには、営業だけを見ていても不十分です。営業とマーケティングをつなげる必要があります。

なぜなら、社長が商談で持っている情報は、マーケティングにも使えるからです。

顧客が検索する言葉。
顧客が問い合わせ前に抱える不安。
商談でよく聞かれる質問。
受注につながる事例。
選ばれる理由。
失注する理由。

これらはすべて、ホームページ、SEO記事、事例ページ、資料、セミナー、メルマガに展開できます。

営業担当者の育成と、問い合わせが生まれる導線づくりは別々ではありません。

社長が売れる理由を営業資料に落とし込む。
同じ内容をホームページにも反映する。
顧客の悩みをSEO記事にする。
事例ページで依頼後の変化を見せる。
問い合わせ後のヒアリング項目も整える。

このように、営業とマーケティングを一体で設計することで、社長の営業力は会社の資産として残ります。

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まとめ|社長の営業力は、会社の成長初期の強み。次は会社の資産に変える

社長の営業力は、中小企業にとって大きな強みです。社長が顧客を理解し、判断し、提案し、信頼を築けるからこそ、会社は成長してきたはずです。

ただし、その力が社長個人に閉じたままでは、営業担当者が育たず、会社として売れる仕組みも残りません。

社長の営業力を手放す必要はありません。必要なのは、分解することです。顧客理解、提案の順番、判断基準、受注理由、失注理由を言語化する。そして、営業資料、提案書、ホームページ、事例、SEO記事、営業会議、育成の仕組みに落とし込む。

それが、社長の営業力を会社の営業資産に変える第一歩です。

社長が一番売れる会社から、組織として売れる会社へ。

そのためには、社長の営業力を個人の才能で終わらせず、会社に残る仕組みに変えていくことが必要です。

社長の営業力を、会社の営業資産に変えませんか?

社長が一番売れることは、中小企業にとって大きな強みです。

一方で、社長の営業力が個人の中に閉じたままだと、営業担当者が育たない、社長が重要商談から抜けられない、ホームページや資料に選ばれる理由が反映されないという課題が起こります。

株式会社風ひらくでは、経営と現場のあいだに立ち、社長が持つ営業ノウハウの言語化、営業資料・提案プロセス・問い合わせ導線・マーケティング施策への展開、KPI・会議体の設計まで伴走しています。

「社長が一番売れる状態を変えたい」
「営業担当者に社長の営業力を引き継ぎたい」
「社長の商談力をホームページや資料にも反映したい」

そんな場合は、まず社長の営業力を分解するところから始めてみませんか。

この記事の著者

青野まさみ

株式会社風ひらく 代表取締役
マーケティングプランナー/ブランディングプロデューサー

サイバーエージェント、博報堂グループでマーケティング・ブランド戦略を経験後、スタートアップ企業の立ち上げに参画。

2019年に独立し、現在は「株式会社風ひらく」代表として、企業・個人あわせて年間200件以上のマーケティング・ブランド支援を行う。

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