社長営業から脱却する方法|社長が動かなくても売れる会社になるために

中小企業では、社長自身が一番の営業担当者であることが少なくありません。

社長の人脈、信用、提案力、判断力があるからこそ、新しい案件が生まれ、受注につながる。
経営者同士の関係性から、重要な商談が前に進む。
顧客も、担当者ではなく社長に相談したいと思っている。

このような会社は多くあります。

社長営業は、悪いものではありません。むしろ、創業期や成長初期には、社長営業が会社を伸ばす原動力になります。

社長自身が顧客の声を聞き、商品やサービスを磨き、直接提案し、売上を作る。

これは、中小企業にとって大きな強みです。

ただし、会社が一定規模を超えても社長営業に依存したままだと、社長が動かなければ売上が止まる状態になります。

新規案件が社長の人脈からしか生まれない。
重要商談には、必ず社長が同席しなければならない。
営業担当者だけでは、なかなか受注まで進まない。
顧客情報や提案ノウハウが、社長の頭の中に閉じている。

この状態が続くと、社長自身が経営や組織づくりに時間を使えなくなり、会社の成長が止まりやすくなります。

社長営業で問題なのは、社長が営業できることではありません。社長が動かなければ、会社の売上が止まることです。社長営業から脱却するとは、社長が一切営業しなくなることではありません。

社長にしかできない営業は残し、組織で担える営業を切り分け、営業・マーケティングの仕組みへ変えることです。

この記事では、社長営業のメリット、社長営業に依存するリスク、社長依存度診断、社長が動かなくても売れる会社に近づくためのステップを解説します。

INDEX −目次−

社長営業とは?

社長自身が新規開拓・商談・受注を担う営業スタイル

社長営業とは、社長自身が新規開拓、商談、提案、受注までを担う営業スタイルです。社長の人脈や紹介、交流会、会食、既存顧客との関係、重要商談などから案件が生まれます。中小企業では、自然な営業スタイルです。

特に創業期や成長初期には、社長自身が最も商品やサービスを理解しており、顧客の課題に対して柔軟に提案できます。

顧客側も、社長が出てくることで会社としての本気度を感じやすくなります。そのため、社長営業は短期的に見れば非常に強い営業方法です。

社長営業は、会社がまだ小さい時期には非常に有効です。社長自身が顧客の声を聞き、商品やサービスを磨きながら売上を作れるからです。

顧客がどんな言葉で課題を話すのか。
なぜ自社を選んでくれるのか。
どの提案が響き、どこで迷うのか。
競合と比べて、どこに価値を感じているのか。

こうした情報を社長が直接得られることは、事業づくりにとって大きな意味があります。また、社長がその場で判断できるため、提案内容や条件の調整も早くなります。

創業期や新規事業の立ち上げ期には、社長営業によって顧客理解が深まり、サービス改善も進みやすくなります。

つまり、社長営業そのものが問題なのではありません。問題は、会社が成長しても、営業の入口から受注までが社長個人に依存し続けることです。

社長営業の大きなメリットは、経営者同士の信頼関係を築きやすいことです。相手が経営者や役員の場合、現場担当者同士では話しにくい経営課題まで踏み込めることがあります。事業の方向性、組織の課題、売上構造、人材不足、将来の投資判断など、経営目線で話が進みやすくなります。

また、社長自らが商談に出ることで、相手に会社としての本気度も伝わります。

「この会社は、きちんと向き合ってくれそうだ」

そう感じてもらいやすいことは、社長営業の強みです。

社長が直接顧客の悩みを聞くことで、市場や現場の変化を把握しやすくなります。

顧客がどのような言葉で悩みを表現しているのか。
どんなタイミングで相談したくなるのか。
何を不安に感じ、どの情報があると意思決定しやすいのか。

こうした情報は、営業だけでなく、商品開発、サービス改善、採用、広報、マーケティングにも活かせます。

社長自身が顧客理解を深められることは、事業全体にとって大きなメリットです。

社長が商談に出ると、その場で判断できることが増えます。

提案内容の調整。
価格や条件の相談。
納期や体制の確認。
追加提案や別プランの提示。

担当者が社内へ持ち帰って確認する必要が少ないため、商談が前に進みやすくなります。特に中小企業では、スピード感が信頼につながることもあります。

社長個人の信用が、新しい案件につながることもあります。経営者仲間、既存顧客、取引先、金融機関、士業、地域団体、業界団体などから、相性の良い相談が生まれることがあります。

紹介営業は、完全な新規営業よりも信頼形成が早く、商談にもつながりやすい方法です。社長が築いてきた人脈や信用は、会社にとって重要な資産です。

ただし、その資産が社長個人の中だけに閉じていると、会社として再現できません。

ここから先は、社長営業の強みをどう会社の仕組みに変えていくかが重要になります。

社長営業に依存する会社が成長しにくい5つの理由

社長営業は強力な営業スタイルです。しかし、社長営業に依存したままでは、会社の成長が止まりやすくなります。

社長の交流会、会食、人脈、紹介に頼って新規案件が生まれている場合、社長が動かない月は商談数が減ります。

社長が忙しくなると、新規開拓が止まる。
社長が体調を崩すと、案件づくりが止まる。
社長が経営課題に集中したいと思っても、営業活動を止められない。

この状態では、社長の稼働時間が売上の上限になります。

社長が動ける範囲でしか、新しい売上が生まれなくなります。

重要商談はいつも社長が対応する。
営業担当者は、日程調整や資料準備、社長のサポートが中心になる。
最後の提案やクロージングは社長が行う。

この状態が続くと、営業担当者は提案や意思決定の場数を積みにくくなります。

結果として、社長がいなければ受注できない状態が続きます。営業担当者の能力不足というより、経験を積む場と、育成の型がないことが問題です。

社長は、商談の中で多くの情報を得ています。

なぜこの顧客は相談してきたのか。
何に不安を感じているのか。
どの言葉に反応したのか。
どこで迷い、何を決め手に受注したのか。
なぜ失注したのか。

しかし、その情報が社長の頭の中に閉じていると、会社の資産になりません。

顧客情報、商談履歴、受注理由、失注理由、提案の型が共有されていなければ、営業担当者も同じ判断を再現できません。

社長が感覚でできていることほど、言語化されにくいものです。

社長が営業、既存顧客対応、採用、組織づくり、資金繰り、事業開発まで抱えていると、常に時間が足りなくなります。特に営業に時間を取られ続けると、未来の事業づくりや組織づくりに向き合う時間が減ります。

社長がすべての重要商談に出る。
社長が営業資料を作る。
社長が顧客フォローをする。
社長が新規開拓もする。

この状態では、会社の成長スピードが社長一人の処理能力に左右されます。

社長営業に依存した会社では、事業承継や次世代体制への移行も難しくなります。

顧客が会社ではなく、社長個人についている。
2代目や幹部、営業責任者へ顧客関係を引き継ぎにくい。
社長がいないと、新規案件も重要商談も進まない。

この状態では、会社としての営業力が育ちません。

社長の営業力は強みですが、会社資産に変えていかなければ、次世代へ引き継ぐことが難しくなります。

社長営業依存度診断|自社はいくつ当てはまる?

ここで、自社の状態を確認してみましょう。次の項目に、いくつ当てはまるでしょうか。

□ 新規案件の多くが、社長の人脈や紹介から生まれている
□ 重要商談には、ほぼ必ず社長が同席している
□ 社長が動かない月は、新規商談が大きく減る
□ 営業担当者だけでは、クロージングまで進みにくい
□ 顧客が担当者ではなく、社長へ直接相談することが多い
□ 商談で何を聞き、どう提案しているかが社内で共有されていない
□ 受注・失注の理由が、社長の頭の中にある
□ 営業資料や提案書を社長が都度作っている
□ 社長が営業に時間を取られ、経営や組織づくりに集中できない
□ ホームページや資料からの問い合わせが少ない
□ 営業担当者や幹部へ顧客関係を引き継ぐのが難しい
□ 社長がいなくても売れる状態をどう作るか決まっていない

当てはまる項目が多いほど、社長営業への依存度が高い可能性があります。

目安として、0〜3個の場合は、社長営業の強みを活かせています。今のうちに、一部の営業プロセスを可視化しておくとよいでしょう。

4〜7個の場合は、社長営業への依存が進んでいます。営業担当者への移管と、顧客情報・商談履歴の共有を始めるタイミングです。

8個以上の場合は、経営リスクとして見直しが必要です。営業・マーケティング体制の再設計を検討することをおすすめします。

※このチェックは、現在地を把握するための簡易診断です。業種や営業スタイルによって、優先して見直すべき項目は異なります。

社長営業から脱却するために、まず切り分けたいこと

社長営業から脱却するために、最初に考えたいのは「社長が営業をやめること」ではありません。

社長に残す営業と、組織へ移管できる営業を切り分けることです。

社長にしかできない営業

社長にしかできない営業は、無理に手放す必要はありません。たとえば、次のような営業です。

・重要顧客との関係構築
・経営課題のヒアリング
・大きな案件の最終提案
・経営者同士の信頼形成
・提携やアライアンスの意思決定
・会社の方向性に関わる提案

こうした場面では、社長が出ることに価値があります。顧客側も、経営判断が必要なテーマでは、社長と話すことで安心することがあります。

社長営業をすべてなくすのではなく、社長が担う価値の高い営業に集中することが大切です。

組織へ移管できる営業

一方で、社長でなくても担える営業もあります。たとえば、次のような業務です。

・問い合わせへの一次対応
・資料送付
・日程調整
・一次ヒアリング
・営業資料作成のベース部分
・商談後のフォロー
・顧客情報の入力
・案件の進捗管理
・既存顧客への定期連絡

これらをすべて社長が抱えていると、社長の時間はどれだけあっても足りません。

まずは、社長が担う必要のない業務から移管していきましょう。

社長営業から脱却するとは、社長が営業をやめることではない

社長営業から脱却するとは、社長が営業をやめることではありません。社長にしかできない営業に集中し、それ以外を組織で回せるようにすることです。

社長が出るべき場面を絞る。
社長が持つ暗黙知を会社に残す。
営業担当者が対応できる範囲を広げる。
問い合わせから商談までの流れを整える。

このように役割を再設計していくことが、社長営業からの脱却です。

 社長営業を会社の営業資産に変える5つのステップ

社長営業から脱却するには、社長の営業力をなくすのではなく、会社の営業資産に変えていく必要があります。

1. 社長が受注している理由を言語化する

まずは、なぜ社長が出ると受注しやすいのかを整理します。

顧客は、社長の何に安心しているのでしょうか。
どんな言葉が響いているのでしょうか。
どんな事例を話すと、顧客は納得しやすいのでしょうか。
価格や条件を提示するとき、どんな判断をしているのでしょうか。

社長の商談を録音する。
営業担当者が同席して、商談後に振り返る。
受注した案件と失注した案件を比較する。

こうした取り組みによって、社長が感覚的に行っている営業を言語化できます。

2. 顧客情報と商談履歴を共有する

次に、顧客情報と商談履歴を共有します。社長のメール、LINE、名刺、記憶の中だけに情報がある状態では、組織で営業を担うことはできません。最低限、次の情報を記録しましょう。

・顧客名
・紹介元
・相談内容
・商談状況
・次回アクション
・受注理由
・失注理由
・顧客が迷っていたポイント
・提案した内容

最初から複雑なSFAやCRMを導入する必要はありません。まずは、会社として必要な情報を共有するところから始めます。

3. 商談・提案の基本型を作る

社長が自然に行っている商談や提案を、基本型にしていきます。たとえば、次のようなものです。

・初回ヒアリング項目
・提案書の基本構成
・よくある質問への回答
・よく使う事例
・料金イメージ
・支援の流れ
・商談後のフォロー文面

顧客ごとに提案を変えることは大切です。ただし、毎回ゼロから作る必要はありません。

基本型があることで、営業担当者も一定の品質で提案しやすくなります。

4. 問い合わせが生まれる入口を増やす

社長の人脈だけに頼らず、問い合わせや商談が生まれる入口を増やします。

たとえば、

・ホームページ
・SEO記事
・サービス資料
・導入事例
・セミナー
・メルマガ
・紹介導線
・資料ダウンロード

などです。

紹介で会社を知った人が、ホームページを見て安心する。
記事を読んだ人が、自社の課題を整理し、資料をダウンロードする。
セミナーに参加した人が、必要なタイミングで相談する。

このような流れを整えることで、社長の人脈以外からも問い合わせ・商談が生まれるようになります。

5. 営業会議とKPIで改善する

社長の感覚だけに頼らず、数字を見て改善する仕組みも必要です。たとえば、次のような数字を確認します。

・問い合わせ数
・商談数
・提案数
・受注数
・受注率
・失注理由
・流入経路

数字を集める目的は、営業担当者を責めることではありません。

どこで止まっているのかを見つけるためです。

問い合わせは増えているが、商談につながっていないのか。
商談は増えているが、受注率が低いのか。
社長が同席した案件と、営業担当者だけの案件で何が違うのか。

こうしたことを見ながら、営業プロセスを改善していきます。

社長営業から脱却するには、営業とマーケティングを分けない

社長営業から脱却するには、営業担当者を育てるだけでは不十分です。

営業担当者が育っても、見込み顧客との接点がなければ、結局は社長が新規開拓に戻ることになります。社長の人脈以外から問い合わせ・商談が生まれる入口を整え、営業フォローまでつなげる必要があります。

ホームページ。
SEO記事。
導入事例。
サービス資料。
紹介導線。
セミナー。
メルマガ。
問い合わせ後の一次対応。
商談後のフォロー。

これらを別々の施策として見るのではなく、問い合わせから商談、受注までの一つの流れとして整えます。

社長が営業しなくても、問い合わせ・商談が生まれる。
営業担当者が基本プロセスに沿って対応できる。
社長は重要顧客や経営課題に関わる商談に集中する。

この状態をつくることで、社長営業の強みを残しながら、社長依存から抜け出すことができます。

「営業を仕組み化する方法|紹介頼み・社長頼みから抜け出す7つのステップ」

まとめ|社長営業の強みを残し、社長依存から抜け出す

社長営業は、決して悪いものではありません。社長自身が顧客の声を聞き、信頼関係を築き、受注につなげてきたからこそ、会社は成長してきたはずです。

ただし、会社が次の段階へ進むには、社長の営業力を会社の資産へ変えていく必要があります。

社長にしかできない営業は残し、組織で担える営業は移管する。

社長が自然に行っている商談、提案、判断を言語化し、営業資料、提案書、ホームページ、問い合わせ導線へ展開する。

社長の人脈以外からも、問い合わせ・商談が生まれる入口を整える。

それが、社長が動かなくても問い合わせ・商談が生まれ、安定的に売上を作れる会社へ進むための第一歩です。

社長営業から脱却し、社長が動かなくても売れる仕組みへ

社長営業は、中小企業にとって大切な強みです。

一方で、社長が動かなければ新規案件が生まれない、重要商談が社長に集中する、営業担当者が育たないという状態が続くと、次の成長に進みにくくなります。

株式会社風ひらくでは、経営と現場のあいだに立ち、社長が持つ営業ノウハウの言語化、営業の属人化解消、紹介営業依存からの脱却、マーケティング体制構築、外部人材を活用した仕組みづくりまで伴走しています。

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そんな場合は、まず現在の営業の流れを可視化するところから始めてみませんか。

この記事の著者

青野まさみ

株式会社風ひらく 代表取締役
マーケティングプランナー/ブランディングプロデューサー

サイバーエージェント、博報堂グループでマーケティング・ブランド戦略を経験後、スタートアップ企業の立ち上げに参画。

2019年に独立し、現在は「株式会社風ひらく」代表として、企業・個人あわせて年間200件以上のマーケティング・ブランド支援を行う。

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