「BtoBマーケティングに取り組みたいものの、何から手をつけるべきか分からない」
そのような課題を抱える中小企業は少なくありません。
営業担当者の人脈や紹介に依存した集客体制のままでは、担当者の異動や退職といった変化に左右されやすく、将来に向けた安定した案件創出が難しくなるためです。
一方で、限られた予算や人員の中で、多数の施策に一度に取り組むことも現実的ではありません。
自社の状況に合わせて、どの順番で何を整えていくかを整理する視点が求められます。
本記事では、BtoBならではの検討の流れを踏まえながら、「土台づくり → 集客施策 → リード育成・営業連携」 という段階に分けて代表的な施策と考え方を解説します。
自社の現状と照らし合わせながら、取り組む順番を検討する際の参考として役立てられます。
BtoBマーケティング施策を整理する前に押さえたい基本と考え方
個別の施策に着手する前に、まずはBtoBマーケティングの目的や、BtoCとの違い、顧客が検討を進める流れを整理しておくことが重要です。
企業間取引では、検討に関わる人数や期間が長期化しやすく、初期接点から受注までの距離も自然と長くなります。
こうした前提を踏まえることで、自社の現状に合った施策の選び方が見えやすくなります。
本章では、後の章で扱う具体的な施策を理解しやすくするための「考え方の土台」を確認していきます。
BtoBとBtoCの違いから考えるBtoBマーケティング施策の特徴
BtoBとBtoCを比較したときにまず意識したいのは、「誰が、どのくらいの期間をかけて、どのように決定しているか」という点です。
BtoCでは、個人が感覚的な印象や価格、口コミなどを手がかりに短期間で購入を決めるケースも多く見られます。
一方、BtoBでは、実務担当者だけでなく、上長、関連部署、経営層など複数の関係者が検討に関わります。
投資額が大きく、業務や既存システムにも影響を及ぼすため、導入可否の判断には慎重さが求められます。
その結果、検討期間が数ヶ月から1年以上に及ぶことも珍しくありません。
このような環境では、「今すぐ導入を」といった直接的な売り込みだけで案件化を目指すのは現実的ではありません。
課題整理に役立つ情報を示し、導入イメージを持てる材料を段階的に伝えながら、少しずつ信頼と理解を積み重ねていく設計が欠かせません。
顧客の検討段階とタッチポイントを整理して施策の役割を決める
BtoBの購買行動は、一般的に「認知 → 興味 → 比較検討 → 社内調整・商談 → 契約」といった段階をたどります。
それぞれの段階で、顧客が接する情報や担当者が求める内容は変化していきます。
例えば、
- 認知・興味の段階では:課題や解決策の全体像をつかめるWebサイトや記事
- 比較検討の段階では:導入事例、ホワイトペーパー、料金イメージ
- 社内調整・商談の段階では:提案書、個別相談、オンラインデモ
といったように、接点ごとの役割を整理すると、施策同士の関係が見えやすくなります。
自社の現状を振り返ったとき、
「そもそも認知が不足しているのか」
「資料請求まではあるが商談につながりにくいのか」
「商談数はあるが受注率が低いのか」
といったボトルネックを把握することで、まず取り組むべき施策の優先度が明確になります。
まず整えたいBtoBマーケティングの土台施策
新たな集客施策に投資する前に、まず確認しておきたいのが、Webサイトやサービス紹介ページ、導入事例など、見込客が必ず目にする接点の状態です。
広告や展示会、ウェビナーなどで関心を持ってもらっても、受け皿となる情報が不足していれば、その時点で検討が止まってしまいます。
本章では、営業活動を支える「土台」として整えておきたい施策について、整備の観点を整理します。
問い合わせにつながるWebサイト・LPの見直しポイント
BtoBのWebサイトやサービス紹介ページは、言わば「常に公開されている会社案内兼提案書」のような役割を担います。
しかし、実際には自社の沿革や強みの説明に終始し、読者にとって知りたい情報に行き着きづらい構成になっているケースも少なくありません。
最初に確認したいのは、ページを開いた瞬間に
「どのような企業の」
「どのような課題に対して」
「どのような価値をもたらすサービスなのか」
が伝わるかどうかです。
ターゲットとなる業種や企業規模、解決したい状況を具体的な言葉で示すことで、見込客は自社に関係する情報かどうか判断しやすくなります。
また、サービス説明では、機能の一覧だけでなく「導入前の課題」「導入後に期待できる成果」「その裏付けとなる仕組み」といった流れで整理すると、検討中の担当者が社内で説明しやすくなります。
問い合わせフォームや資料請求ボタンは、ページ下部だけでなく、読み進めたタイミングでも目に入るよう複数箇所に設置し、スマートフォンでの閲覧性も含めて確認しておくとよいでしょう。
導入事例・ホワイトペーパーなど検討材料となるコンテンツの整備
BtoBの検討では、社内稟議や関連部署との合意形成が欠かせません。
その際、担当者は「なぜこの会社なのか」「どれくらいの効果が期待できるのか」を説明するための材料を求めています。
この材料となるのが、導入事例やホワイトペーパー、料金イメージなどのコンテンツです。
導入事例は、同じ業界や似た規模の企業がどのような課題を抱え、どのような経緯でサービスを選び、どのような変化があったかを具体的に伝えるため、説得力の高い情報になります。
1件でも、課題と結果が分かりやすく整理された事例があると、検討の進み方が大きく変わります。
加えて、業界やテーマごとに課題と解決策を整理した資料(いわゆるホワイトペーパー)や、料金やプランの概要、よくある質問の一覧なども、社内の説明資料として役立ちます。
新規リードを増やすためのデジタルマーケティング施策
Webサイトや資料といった受け皿が整ってきたら、新規リードを継続的に獲得するための施策を検討します。
BtoBでは、検索、広告、ウェビナー、SNSなど、オンライン上の接点が多様化しており、ターゲット企業の情報収集行動に合わせてチャネルを組み合わせていく発想が求められます。
ここでは、特に中小企業でも取り組みやすく、長期的な基盤づくりにもつながる代表的な施策を取り上げます。
SEO対策とオウンドメディア運営で見込客の検索ニーズをとらえる
SEO対策とオウンドメディアの運営は、広告費に大きく依存せずに中長期的な集客の基盤をつくる手段として有効です。
たとえば、
「製造業 在庫管理 手作業」
「営業活動 可視化 方法」
「建設業 原価管理 システム 比較」
といったように、「業種・職種」「課題」「解決方向性」が組み合わさったキーワードが想定されます。
こうした検索に対して、現場の悩みに寄り添いながら解決の道筋を示す記事を用意していくことで、「まさに今情報を探している見込客」と自然に接点を持つことができます。
BtoBでは、単に自社サービスの特徴を説明するだけでなく、導入時につまずきやすいポイントや社内説得のコツ、検討時の比較観点なども合わせて示しておくと、担当者にとっての信頼感が高まりやすくなります。
広告・ウェビナー・SNSで接点を増やしながら質の高いリードを獲得する
SEOだけでは出会いづらい層や、短期間で接点を増やしたい場合には、広告・ウェビナー・SNSを組み合わせた取り組みも有効です。
検索結果画面に表示されるリスティング広告は、すでに課題が明確になっている企業に対して、早い段階で候補に上がることができます。
また、業界メディアや関連サイトに表示するディスプレイ広告は、サービス名や企業名の認知を広げる役割を担います。
ウェビナーは、業界動向や課題別の解決方法などをテーマに開催することで、「情報収集の優先度が高い層」と直接接点を持てる機会になります。
参加申し込みの際に企業名や役職、関心テーマなどを把握できるため、その後のフォローにも生かしやすくなります。
実施したウェビナーの内容を録画・編集し、コンテンツとして二次利用することも可能です。
SNSについては、経営層や意思決定に近い立場のユーザーが多いLinkedInや、業界情報の発信に適したXなどが候補になります。
自社のターゲット層がどこで情報収集を行っているかを踏まえ、集中して取り組むチャネルを一つ選び、継続的に発信していくことが現実的な始め方と言えます。
リード育成と営業連携で成果につながるBtoBマーケティング施策にする
広告やSEO、ウェビナーなどで新たなリードが集まり始めても、すべてがすぐに商談や受注に結びつくわけではありません。
BtoBでは、資料請求や問い合わせ時点では「情報収集の段階」にあるケースも多く、一定期間をかけて検討が進んでいきます。
このため、獲得したリードに対して継続的な情報発信を行い、関心度が高まったタイミングで営業と連携する仕組みづくりが重要になります。
本章では、その考え方と基本的な進め方を整理します。
メール・セミナー・コンテンツ配信で関心度を高めるリード育成
問い合わせや資料請求を行った見込客の中には、「今すぐに導入を検討している企業」だけでなく、「自社の状況を整理するために情報を集めている段階」の企業も多く含まれています。
すべてを一度のアプローチで案件化しようとするのではなく、時間をかけて関係性を深めていく発想が欠かせません。
そのための手段として有効なのが、メールマガジンやセミナー案内、関連コンテンツの配信です。
業界の動きや法制度の変化、導入事例や活用の工夫など、日々の業務に役立つ情報を定期的に届けることで、「困ったときにまず相談したい相手」として認識されやすくなります。
最初から高度な仕組みを用意する必要はなく、月1回程度のメール配信から始め、反応の良いテーマやクリックされやすいコンテンツを把握していく進め方が現実的です。
少しずつ接点を重ねながら、見込客との距離を縮めていくイメージがリード育成の基本となります。
営業との連携ルールと、社内だけで難しい場合の外部パートナー活用
マーケティング活動の成果を受注につなげていくには、営業との連携が不可欠です。
リードをどのタイミングで営業側に引き継ぐのか、どのような行動を「関心が高いサイン」とみなすのか、といった基準を事前にすり合わせておくことで、双方の動きが揃いやすくなります。
例えば、
- 資料請求のみの場合はメール配信での育成を継続する
- ウェビナー参加や重要ページの複数回閲覧があれば、営業からのフォロー候補とする
といった区分を設定し、フォローの目安となる期間も合わせて決めておくと、対応のばらつきを減らすことができます。
また、月次など定期的に「どの施策からどの程度リードが生まれたか」「どの経路からのリードが商談・受注につながりやすいか」を振り返る場を設けることで、マーケティングと営業が同じ目線で改善を進めやすくなります。
BtoBマーケティング施策を成果につなげるためには
本記事では、BtoBマーケティングの基本的な考え方から、Webサイトや資料などの土台施策、新規リードを獲得するためのデジタル施策、リード育成と営業連携まで、一連の流れを俯瞰して整理しました。
中小企業にとって、これらすべてに一度に取り組むのは現実的ではありません。
自社の現状を振り返り、「まずはどの段階に課題があるのか」「どこを整えると営業活動が楽になるのか」といった観点から優先順位を決めていくことが重要です。
土台となる情報発信の整備と、少しずつの施策改善を積み重ねることで、安定した商談創出に近づいていきます。
「社内だけで進めるには不安がある」「方針づくりから相談したい」といった場合には、BtoB向けのマーケティング支援を行う外部の専門家に意見を求めるのも一案です。
株式会社風ひらくの「BtoBマーケティング支援」では、中小企業の実情に合わせた形で、戦略設計から施策運用までを並走する支援を行っています。
自社に合ったマーケティングの進め方を検討する際の相談先として、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
この記事の著者

青野まさみ
株式会社風ひらく 代表取締役
マーケティングプランナー/ブランディングプロデューサー
サイバーエージェント、博報堂グループでマーケティング・ブランド戦略を経験後、スタートアップ企業の立ち上げに参画。
2019年に独立し、現在は「株式会社風ひらく」代表として、企業・個人あわせて年間200件以上のマーケティング・ブランド支援を行う。


