「営業担当者はいるが、マーケティングを担う人がいない」
「ホームページ、展示会、広告、SEOなどに取り組みたいが、誰が方針を決めるのかわからない」
「制作会社や広告代理店から提案を受けても、社内で判断できる人がいない」
「マーケティング担当者を採用すべきか、営業担当者に兼務してもらうべきか、外部へ依頼すべきか迷っている」
このような悩みを抱える中小企業は少なくありません。ただし、最初に考えるべきなのは、「誰を採用するか」ではありません。
マーケティング担当者がいないことよりも、マーケティングの責任者がいないことが問題です。
誰が顧客を理解するのか。
誰が施策の優先順位を決めるのか。
誰が営業と連携するのか。
誰が数字を見て改善するのか。
ここが曖昧なままでは、ホームページを作っても、広告を出しても、展示会へ出ても、施策がバラバラに進みます。
マーケティングは、SNS投稿や広告運用だけではありません。顧客との接点をつくり、問い合わせ、商談、受注につながる流れを整えることです。
この記事では、マーケティング担当者がいない会社で起きやすい問題と、採用より先に整えるべき5つのこと、採用・兼務・外注の使い分けを解説します。
マーケティング担当者とは?
広告やSNSだけではない。顧客との接点から受注までを整える役割
マーケティング担当者の仕事というと、広告運用、SNS投稿、ホームページ更新、メルマガ配信などをイメージする方も多いかもしれません。
もちろん、これらも重要な実務です。ただし、マーケティングの役割はそれだけではありません。
本来は、
・どのような顧客に届けるのか
・顧客はどのような課題を抱えているのか
・なぜ自社が選ばれるのか
・どこで顧客と接点をつくるのか
・どのように問い合わせや相談につなげるのか
・問い合わせ後、営業とどのように連携するのか
・どの数字を見て改善するのか
を整理し、会社として成果が出る流れをつくる役割です。
そのため、マーケティング担当者の仕事には、次のようなものが含まれます。
・市場や顧客の理解
・サービスの言語化
・ホームページやサービスページの改善
・SEO記事や資料の企画
・展示会、セミナー、メルマガの設計
・広告施策の判断
・問い合わせ導線の整備
・営業部門との連携
・KPIの確認と改善
施策を実行するだけではなく、「今、何を優先すべきか」を決めることも重要です。
営業担当者との役割の違い
営業は、目の前の顧客との商談を進める役割です。顧客の状況を聞き、提案し、受注へつなげます。
一方、マーケティングは、顧客に見つけてもらい、「相談したい」と思ってもらうまでの流れを整える役割です。
たとえば、
・顧客が検索したときに、自社のホームページや記事へたどり着く
・サービス資料を読んで、自社の課題に合うと感じる
・セミナーに参加し、相談したいと思う
・問い合わせ後、営業担当者がスムーズに商談へつなげる
という流れをつくります。
営業とマーケティングは、分けるのではなく、つなげる必要があります。中小企業では、営業とマーケティングの境界が完全に分かれていなくても構いません。
大切なのは、それぞれの役割を整理し、見込み顧客との接点づくりから受注までが一つの流れとしてつながっていることです。
マーケティング担当者がいない会社で起きやすい7つの問題
マーケティング担当者がいない会社では、担当者不足そのものよりも、方針を決める人がいないことで、施策が分断されやすくなります。
ここでは、よく起きる7つの問題を紹介します。
1. ホームページ、広告、展示会が単発施策になる
ホームページを作る。
展示会へ出る。
広告を出す。
SEO記事を増やす。
こうした施策は、それぞれ大切です。ただし、何のために実施するのか、その後どこへつなげるのかが曖昧だと、単発で終わってしまいます。
ホームページを作ったものの、問い合わせが増えない。
展示会で名刺交換をしたものの、その後のフォローがない。
広告を出したものの、商談や受注につながったか確認できない。
問題は施策そのものではありません。問い合わせから商談、受注までの全体像がないことです。
2. 制作会社や代理店の提案を判断できない
Web制作会社、広告代理店、SEO会社など、外部パートナーはそれぞれ専門性を持っています。ただし、社内に判断基準がない状態では、外部から提案を受けても、何を優先すべきかわかりません。
ホームページのデザインを変えるべきなのか。
広告を増やすべきなのか。
SEO記事を増やすべきなのか。
サービス資料を作るべきなのか。
提案された通りに進めるか、判断できずに止まるかの二択になりがちです。
必要なのは、制作会社や代理店を否定することではありません。経営課題と施策をつなぎ、優先順位を判断する役割を社内または外部に置くことです。
3. 営業とマーケティングが分断される
マーケティング施策で問い合わせが来ても、営業がどのようにフォローするか決まっていない。
営業現場でよく聞く顧客の悩みが、ホームページや資料に反映されていない。
どの施策から商談や受注が生まれたのか、追えていない。
このような状態では、マーケティングと営業が別々に動いています。
営業現場には、顧客の悩み、失注理由、選ばれる理由が蓄積されています。
その情報をホームページ、サービス資料、SEO記事、セミナー、メルマガへ反映することで、問い合わせの質も高まりやすくなります。
4. 発信や施策が担当者の思いつきで変わる
「SNSを始めよう」
「メルマガを配信しよう」
「ブログを更新しよう」
「セミナーを開催しよう」
思いついた施策を始めても、目的や優先順位が明確でなければ、継続しません。
忙しくなると止まる。
担当者が変わると、ゼロに戻る。
成果が出ているか判断できず、いつの間にか放置される。
この状態を防ぐには、施策ごとの役割と、継続するための体制を整える必要があります。
5. 誰に届けるのかが曖昧になる
幅広い顧客に伝えようとすると、訴求がぼやけます。ホームページや資料が会社案内になり、顧客が「自社に合うサービスだ」と感じにくくなります。営業担当者によって、説明内容が異なることもあります。まずは、誰に、どんな課題で相談してほしいのかを整理しましょう。
業種、企業規模、役職、課題、相談が発生するタイミングを具体化します。
すべての顧客を断る必要はありません。
ただし、最初に届けたい顧客像を明確にすることで、ホームページや営業資料の言葉も整いやすくなります。
6. 数字を見て改善する習慣がない
アクセス数は見ている。
問い合わせ数も何となく把握している。
しかし、どの施策から商談や受注が生まれたかはわからない。
このような状態も少なくありません。確認したいのは、アクセス数だけではありません。
・資料ダウンロード数
・問い合わせ数
・商談数
・提案数
・受注数
・受注率
・流入経路
・失注理由
などをつなげて見る必要があります。
数字を集める目的は、担当者を責めることではありません。どこで顧客が止まっているのかを見つけ、改善するためです。
7. 外注しても、社内にノウハウが残らない
マーケティング施策を外注すること自体は、悪いことではありません。むしろ、専門性が必要なSEO、デザイン、広告運用、ライティングなどは、外部の力を借りたほうがよい場合もあります。
問題は、外部へ任せきりになり、社内に判断力や運用方法が残らないことです。
契約が終わると、施策も止まる。
担当者が変わると、何をしていたのかわからない。
数字を見ても、何を改善すべきか判断できない。
外部パートナーを活用しながら、社内に知識と仕組みを残すことが大切です。
マーケティング担当者がいない会社診断|自社はいくつ当てはまる?
ここで、自社のマーケティング体制を振り返ってみましょう。次の項目に、いくつ当てはまるでしょうか。
□ ホームページ、広告、展示会、SEOなどの優先順位が決まっていない
□ 誰がマーケティングの責任者なのか明確ではない
□ 制作会社や代理店の提案を、社内で判断できる人がいない
□ 営業担当者が聞いている顧客の悩みを、施策へ反映できていない
□ 問い合わせ後、営業がどのようにフォローするか決まっていない
□ ホームページや資料で、誰に何を提供する会社なのか伝わりにくい
□ SNS、メルマガ、記事、セミナーなどを始めても継続できない
□ アクセス数、問い合わせ数、商談数、受注数をつなげて確認していない
□ どの施策が成果につながったか把握できていない
□ Web制作会社、広告会社、SEO会社などが別々に動いている
□ 外注先との契約が終わると、施策も止まる
□ マーケティング担当者を採用したいが、任せる仕事を具体的に説明できない
当てはまる項目が多いほど、担当者不足よりも「責任者不在」による分断が起きている可能性があります。
目安として、0〜3個の場合は、基盤があります。担当者の役割とKPIをさらに明確にするとよいでしょう。
4〜7個の場合は、責任者不在による分断が起きています。施策の優先順位と営業連携を整理するタイミングです。
8個以上の場合は、担当者採用だけでは解決しにくい状態です。マーケティング体制全体の再設計を検討することをおすすめします。
※このチェックは、現在地を把握するための簡易診断です。業種や事業フェーズによって、優先して見直すべき項目は異なります。
マーケティング担当者がいない会社が最初に整えるべき5つのこと
マーケティング担当者がいないからといって、すぐに専任担当者を採用する必要はありません。まずは、会社として何を決め、誰が責任を持つのかを整理しましょう。
1. マーケティングの責任者を決める
最初に必要なのは、マーケティングの責任を持つ人を決めることです。専任担当者でなくても構いません。社長、営業責任者、兼務担当者、外部パートナーでもよいでしょう。
大切なのは、
・誰が顧客を理解するのか
・誰が施策の優先順位を決めるのか
・誰が進捗を見るのか
・誰が数字を確認するのか
を明確にすることです。
意思決定と実務を、一人で抱える必要もありません。
たとえば、社長が方針を決め、社内担当者が進行を管理し、専門的な制作や運用は外部へ依頼する方法もあります。
2. 狙う顧客と、選ばれる理由を整理する
次に、誰に、どんな課題で相談してほしいのかを整理します。
既存顧客の中で、今後増やしたい顧客はどのような会社でしょうか。
顧客は、なぜ自社を選んだのでしょうか。
紹介者は、どのような言葉で自社を説明しているでしょうか。
営業担当者は、商談でどのような悩みを聞いているでしょうか。
この情報を整理し、ホームページ、サービス資料、SEO記事、セミナー、提案書へ反映します。
顧客像と選ばれる理由が曖昧なままでは、どの施策を実施しても、メッセージがぼやけます。
3. 問い合わせから受注までの流れを可視化する
ホームページ、SEO、展示会、セミナー、紹介など、見込み顧客との入口を洗い出します。
その後、
・資料ダウンロード
・問い合わせ
・一次対応
・ヒアリング
・商談
・提案
・受注
・継続提案
までの流れを整理します。
問い合わせ後、誰が何日以内に対応するのか。
資料ダウンロードをした人に、どのような情報を届けるのか。
今すぐ商談にならない見込み顧客と、どのように接点を持ち続けるのか。
営業との役割分担も含めて決めましょう。
問い合わせを増やすだけでなく、商談や受注につなげる設計が必要です。
4. KPIと会議体を整える
マーケティング施策は、やって終わりではありません。数字を見ながら改善する必要があります。
アクセス数だけでなく、
・資料ダウンロード数
・問い合わせ数
・商談数
・提案数
・受注数
・受注率
・流入経路
を確認しましょう。
月次や週次で状況を確認し、次に何を改善するのかを決めます。
問い合わせは増えているが、商談につながっていないのか。
商談は増えているが、受注率が低いのか。
特定の流入経路から、質の高い相談が来ているのか。
数字を見ることで、弱い箇所が見えてきます。
5. 社内と外部の役割分担を決める
すべてを社内で行う必要はありません。
マーケティングには、戦略、ディレクション、実務があります。たとえば、
社内で担うこと:
・顧客理解
・現場理解
・意思決定
・営業連携
外部へ依頼できること:
・SEO
・Web制作
・広告運用
・ライティング
・デザイン
・分析支援
というように分けられます。
大切なのは、外部へ任せきりにしないことです。社内に判断基準と運用方法を残しながら、必要な専門性を外部から補います。
採用・兼務・外注、どの方法が合う?
マーケティング体制を整える方法は、一つではありません。
会社の状況に応じて、兼務、採用、外部パートナー活用を組み合わせましょう。
社内の兼務担当者が向いている会社
まず小さく始めたい会社には、社内の兼務担当者を置く方法があります。顧客理解が深い社員や、営業、広報と連携しやすい社員が向いています。
ただし、兼務の場合は、時間を確保できないと施策が止まりやすくなります。本業が忙しくなると、マーケティング施策が後回しになるからです。
兼務担当者を置く場合は、上司と優先順位を合意し、定期的に時間を確保しましょう。
専任担当者の採用が向いている会社
一定の施策量があり、継続的な運用が必要な会社では、専任担当者の採用が向いています。ただし、採用すれば自動的に成果が出るわけではありません。
社内にマーケティング戦略を理解する責任者がいること。
採用後に何を任せるのかが明確であること。
どの数字で評価するのかが決まっていること。
これらが必要です。
方針が曖昧なまま採用すると、担当者はSNS投稿、Web更新、チラシ作成などの実務に追われ、成果につながる仕事へ集中しにくくなります。
外部パートナーの活用が向いている会社
社内に専門知識や推進役がいない場合は、外部パートナーを活用する方法もあります。
何から始めるべきか整理したい。
戦略と実行をつなぎたい。
複数の専門家をまとめるディレクションが必要。
短期間で体制を整えながら、社内にノウハウを残したい。
このような会社に向いています。
おすすめは、社内担当者と外部パートナーの協業
中小企業のマーケティング体制は、最初からすべてを内製化する必要はありません。
社内に顧客と現場を理解する人を置き、外部の専門家と協業しながら、少しずつ判断力と運用力を残していく方法が現実的です。
社内担当者は、顧客の声、現場の状況、会社の方針を理解しています。外部パートナーは、専門知識、他社事例、進行管理の視点を持っています。両者が連携することで、外部丸投げでも、社内だけで抱え込むのでもない体制をつくれます。
最終的には、社内で判断できる状態を目指しましょう。
マーケティング担当者を採用する前に、整理しておきたいこと
マーケティング担当者を採用する前に、「何を任せる人なのか」を整理しましょう。
SNS運用やWeb更新を行う実務担当者と、施策の優先順位を決める責任者では、必要な経験も役割も異なります。
採用前に、次のことを確認します。
・何を成果とするのか
・誰に向けた施策を進めるのか
・どこまでを社内で行い、何を外注するのか
・営業部門とどう連携するのか
・どの数字を見るのか
・実務担当者が必要なのか、責任者が必要なのか
「マーケティング担当者」という言葉だけで募集すると、期待する役割と、応募者が得意なことがズレる可能性があります。SNS運用担当、Web担当、広告運用担当、コンテンツ担当、マーケティング責任者では、仕事内容も必要な経験も異なります。
採用する前に、自社に必要な役割を明確にしましょう。
マーケティング担当者がいなくても、営業とマーケティングをつなぐことはできる
マーケティング担当者がいなくても、最初の一歩は踏み出せます。まずは、営業現場に蓄積されている情報を集めましょう。
顧客は、どのような悩みを抱えているのか。
どんなタイミングで相談するのか。
なぜ自社を選んだのか。
どんな理由で失注したのか。
どのような言葉で紹介されているのか。
この情報を整理し、ホームページ、サービス資料、SEO記事、セミナー、メルマガへ反映します。問い合わせ後のフォロー方法も、営業と一緒に決めましょう。
マーケティング担当者が不在でも、会議体と役割分担があれば始められます。
大切なのは、営業とマーケティングを別々に考えないことです。顧客との接点づくりから、問い合わせ、商談、受注までを一つの流れとして整えましょう。
「営業を仕組み化する方法|紹介頼み・社長頼みから抜け出す7つのステップ」
まとめ|必要なのは、担当者の採用より先に「責任者」と「仕組み」を置くこと
マーケティング担当者がいないこと自体が、すぐに問題なのではありません。
問題は、誰が顧客を理解し、施策の優先順位を決め、営業と連携し、数字を見て改善するのかが曖昧なことです。
ホームページ、SEO、広告、展示会、メルマガをバラバラに実施しても、問い合わせや商談につながる仕組みにはなりません。
最初に整えるべきなのは、マーケティングの責任者、狙う顧客、問い合わせから受注までの流れ、KPI、社内と外部の役割分担です。
最初からすべてを内製化する必要はありません。社内に顧客と現場を理解する人を置き、外部の専門家と協業しながら、少しずつ判断力と運用力を残していく。
それが、中小企業が無理なくマーケティング体制を整えるための第一歩です。
マーケティング担当者がいない会社に、社内で回る仕組みを
マーケティング担当者がいない場合、いきなり採用や広告から始めても、成果につながらないことがあります。
誰に、どんな価値を、どのように伝えるのか。
ホームページ、SEO、展示会、資料、メルマガなどの施策を、問い合わせ・商談・受注までどうつなげるのか。
誰が責任を持ち、数字を見て改善するのか。
株式会社風ひらくでは、経営と現場のあいだに立ち、顧客理解、サービスの言語化、マーケティング施策の優先順位、問い合わせ導線、営業プロセス、KPI、会議体の設計、外部パートナーとの連携まで伴走しています。
「社内にマーケティング担当者がいない」
「制作会社や広告会社へ依頼しているが、成果がつながらない」
「採用する前に、どんな体制が必要か整理したい」
そんな場合は、まず現在の営業・マーケティングの流れを可視化するところから始めてみませんか。
この記事の著者

青野まさみ
株式会社風ひらく 代表取締役
マーケティングプランナー/ブランディングプロデューサー
サイバーエージェント、博報堂グループでマーケティング・ブランド戦略を経験後、スタートアップ企業の立ち上げに参画。
2019年に独立し、現在は「株式会社風ひらく」代表として、企業・個人あわせて年間200件以上のマーケティング・ブランド支援を行う。
」.jpg)

